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2025年EUサイバーセキュリティ指令「NIS2」:ドイツ企業への影響と実践的対応策
Jefferson Santos @ Unsplash
2025年より完全施行されたEUの「NIS2」指令は、ドイツ国内の企業に対するサイバーセキュリティ要件を大幅に強化しています。特に、テック業界、ゲーム業界、重要インフラ分野の企業は、新たな義務を負うことになります。違反した場合、多額の制裁金や経営者個人の法的責任が問われるリスクがあります。本稿では、NIS2の概要と実務対応に役立つ具体的な戦略をご紹介します。
NIS2の概要:拡大された対象範囲と新たな義務
NIS2は、従来のNIS指令よりも適用対象が広がり、ITサービス提供者、ゲームプラットフォーム、製造業なども含まれるようになりました。主な義務は以下の通りです:
- 厳格なサイバーセキュリティ対策の導入
- サイバー攻撃の24時間以内の報告義務
- サプライチェーン全体にわたるセキュリティ確保
- 経営陣の個人責任(セキュリティ措置が不十分な場合)
違反した場合、最大で1,000万ユーロまたは全世界売上高の2%の罰金が科される可能性があります。
ドイツ企業への影響:コストとリスクの現実
NIS2の実施には以下のような課題が伴います:
- コストの増加:ファイアウォール導入や従業員教育など、セキュリティ対策に多額の費用が必要になります。
- 法的リスク:データ漏洩が発生した場合、顧客や取引先に損害が生じれば企業や経営者が損害賠償責任を負う可能性があります。
- サプライチェーンの脆弱性:外部のITベンダーなど、弱い部分が一つでもあれば全体が危険にさらされるリスクがあります。
実務においては、準備のない企業ほど法的・経済的損失や信頼の喪失に直面しています。
国際的な視点:サプライチェーンと国際基準の整合性
NIS2はEU域内だけでなく、海外の取引先にも影響を及ぼします。特にアジアや米国と取引があるドイツ企業は、これらのパートナーが同様のサイバーセキュリティ基準を満たしているかどうか確認しなければなりません。
一部のアジア諸国では、NIS2よりも緩い基準しか求めていない場合もあり、基準の違いが実務上の障壁となります。そのため、サプライチェーン全体を精査し、契約ベースでの対応が求められます。
実務的解決策:NIS2対応のための具体的アクション
NIS2の要件を満たすためには、以下の対応が推奨されます:
- リスク評価:定期的なセキュリティ診断を実施し、脆弱性を把握する
- ISO 27001の導入:国際的に認知された標準で社内体制を整備する
- 従業員教育:インシデント発生時の24時間以内の報告対応などを徹底する
- サプライチェーン管理:契約にサイバーセキュリティ条項を追加し、定期的に遵守状況を確認する
- 緊急対応計画:攻撃発生時の対応手順を整備し、損害最小化と報告義務の順守を確実にする
安全への第一歩
NIS2はドイツ企業にとって新たな課題をもたらしますが、適切な体制を整えることで、罰金や法的責任、企業イメージの損失を回避することが可能です。リスク評価からサプライチェーン管理まで、一貫した戦略的対応が鍵を握ります。サイバーセキュリティと法令遵守に関する確かな専門知識が、企業の競争力を左右する時代です。
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